――あなたと恋人になってから、過ごす時間の中に、灰色の時間がある事に気付きました――
あなたに会えない時間は確かに灰色だけれど、あなたと会えた時、あなたと過ごす時の嬉しさから来る様々な色を感じるために、この灰色の時間は自分にとって必要なんだと思っています。だから、この灰色の時間は自分の中から決して消してはいけない時間だとも分かっています。
あなたを感じるための灰色の時間がこのまま消えない様、なくしてしまわない様、この灰色の時間を大切に持っていようと思います。
――あなたと過ごす時間の彩りをいつまでも、いつまでもずっと感じていたいから――
「何?」
「土井垣さんとしょっちゅう離れてて寂しくない?」
弥生の問いに、葉月は苦笑しながら答える。
「うん、最初は寂しいなって思った事もあったけど…」
「けど?」
「そう思った後に会えた時って、最高に嬉しくて、いろんなことをしたくなって…そんな風に気付いた時に、会えない時には今度会う時に何をしようかな、って考えるのが寂しいけど楽しくなったの」
「そっか…」
複雑な表情を見せる弥生に、葉月も問いかける。
「じゃあヒナは微笑さんと会えない時、寂しい?」
葉月の問いに、弥生はふっと笑って答える。
「うん、まだはーちゃんの域には達してないからね。ちょっと寂しいかな」
「そう…」
葉月は頷くと、傍でおとなしく話を聞いていた若菜に話を振る。
「そう考えると一番幸せなのはお姫だよね~いっつも気にしてもらって、絵葉書を送ってくれて」
葉月の言葉に、若菜はふっと寂しげな表情を見せて応える。
「そうよね。…幸せ…なのよね…」
「どうしたのよ、おゆき」
若菜は寂しげな微笑を見せて更に応える。
「確かに、光さんは絵葉書を絶え間なく届けてくれるし、電話もよく掛けてくれるわ。でも贅沢なのかしら、私はそれが寂しいの…傍に光さんがいないって痛感させられるから。だから…おようの強さが羨ましい。私も、おようみたいになりたいの」
寂しげな微笑みを見せ応える若菜に、弥生と葉月は励ます様に言葉を掛ける。
「大丈夫、あたしだってそんな時期を越えて今の域に達したんだから、お姫だってそうなれるよ」
「寂しい時にはあたし達だっているんだから。皆で考えよう?お互い彼氏に会った時に何をしようか。どんなに幸せになれるか」
「…そうね」
若菜はにっこりと微笑む。それを見た葉月と弥生も微笑み、そこからはお互い『恋人に会うまでに何をして、会ったらどうするか』という話で盛り上がった。
――寂しさの灰色の時間を後の喜びの彩りに変えて――