西部ドームでの試合が終わった後、山田と里中は里中の車で西所沢駅へ向かっていた。ロッテが西武のビジターで試合をする時、車を使って来る里中が電車を使って保土ヶ谷からやって来る山田をこうして駅まで車で送るのが常になっていた。理由としては表向きは早く山田を帰してやりたいという里中の気遣いであったが、本心は離れがたい気持ちを里中が持っていたからである。とはいえ千葉に住んでいる里中と保土ヶ谷に住む山田とは住む場所が方向的には逆方向。本当は『池袋位まで送る』と言っている里中に『遠回りさせるのは悪いから』と気を遣い、所沢までにしているのが現状なのである。そうして駅までの短い時間を二人は無言で車を走らせる。そうして駅まで着くと、山田が口を開いた。
「...じゃあ、いつもありがとう、里中」
「いや...また明日な」
「ああ...そうだ、その内家にも遊びに来いよ」
「そうだな...そうだ、お前こそうちに来てくれよ、おふくろが喜ぶからさ」
「ああ、そうさせてもらうよ」
二人の会話はそこで途切れ、二人は見詰め合う。そうして暫くの沈黙の後、山田が口を開いた。
「それじゃあな...里中」
「...ああ」
そう言ってドアを閉めようとした矢先、里中の口から言葉が零れ落ちていた。
「待ってくれ...山田」
「どうした?」
そんな言葉が里中の心を駆け巡る。しかし、次に彼の口から零れ落ちたのはそれとは裏腹な言葉だった。
「いや...なんでもない。じゃあな、山田」
「...?ああ、じゃあな」
里中の様子を怪訝そうに思いながらも、山田は別れの言葉を告げ、ドアを閉める。里中はそれと共にアクセルを踏み込んだ。遠ざかっていく自分を見送る山田の姿をバックミラーで見詰めながら、里中は唇を噛み締めていた。
そんな言葉がまだ里中の心の中を駆け巡っていた。その気持ちを振り切る様に里中はアクセルを踏む。山田も同じ気持ちでいてくれるだろうか。それだったら耐えられる。でも、自分一人の気持ちだったら――この想いは身を刻むほどの切なさを連れて来た。里中は自分の気持を振り切る様に高速を走り、家路を急いだ。
「...じゃあ、いつもありがとう、里中」
「いや...また明日な」
「ああ...そうだ、その内家にも遊びに来いよ」
「そうだな...そうだ、お前こそうちに来てくれよ、おふくろが喜ぶからさ」
「ああ、そうさせてもらうよ」
二人の会話はそこで途切れ、二人は見詰め合う。そうして暫くの沈黙の後、山田が口を開いた。
「それじゃあな...里中」
「...ああ」
そう言ってドアを閉めようとした矢先、里中の口から言葉が零れ落ちていた。
「待ってくれ...山田」
「どうした?」
カエラナイデ。
カエシタクナイ。
ココニイテ。
カエシタクナイ。
ココニイテ。
そんな言葉が里中の心を駆け巡る。しかし、次に彼の口から零れ落ちたのはそれとは裏腹な言葉だった。
「いや...なんでもない。じゃあな、山田」
「...?ああ、じゃあな」
里中の様子を怪訝そうに思いながらも、山田は別れの言葉を告げ、ドアを閉める。里中はそれと共にアクセルを踏み込んだ。遠ざかっていく自分を見送る山田の姿をバックミラーで見詰めながら、里中は唇を噛み締めていた。
ハナレタクナイ。
ソバニイテ。
ココニイテ。
ソバニイテ。
ココニイテ。
そんな言葉がまだ里中の心の中を駆け巡っていた。その気持ちを振り切る様に里中はアクセルを踏む。山田も同じ気持ちでいてくれるだろうか。それだったら耐えられる。でも、自分一人の気持ちだったら――この想いは身を刻むほどの切なさを連れて来た。里中は自分の気持を振り切る様に高速を走り、家路を急いだ。
――カエラナイデ。
カエシタクナイ。
ソバニイテ。
ココニイテ。
ハナレナイデ。
ハナサナイデ――
カエシタクナイ。
ソバニイテ。
ココニイテ。
ハナレナイデ。
ハナサナイデ――