「山田、明日のオフはどこに行こうか」
「そうだな…」
 ここは東京スーパースターズのロッカールーム。今日もスターズは里中の完封と山田(&岩鬼や殿馬や三太郎)の活躍で勝利をおさめ、明るい雰囲気で着替えていた。明日は待望のオフ。チームメイト達はそれぞれの予定を話していたが、里中はいつものごとく山田と過ごすのか、彼に話しかけている。それを見た三太郎が、からかう様に問い掛ける。
「智~、たまには山田抜きでオフを過ごそうとか考えないのか~?山田だっていっつも里中に束縛されてたら困る事多いんじゃないか?」
 その言葉を里中は本気に取ったのか、ふっと不安気な表情を見せると山田に問い掛ける。
「山田…俺がこうやっていつもついてるのって…迷惑か?」
 その問いに山田はにっこり笑って答える。
「全然迷惑じゃないさ。里中と一緒に過ごすのが、俺は一番楽しいんだから」
「山田ぁ…!」
 そう言うと二人はしっかと抱き合う。それを見ていた緒方が呆れた様に口を開く。
「全く…いつもこんな感じだもんな」
「時に聞くがお二人さん、ケンカとかした事はないのか?」
 わびすけの問いに、二人は少し考えると、あっさり答えた。
「明訓の頃は少しケンカもしたけど…今は全然だよな」
「ケンカする必要もないし。お互いケンカしたくないし」
「…」
 二人の言葉に面々は内心頭を抱えた。まるで万年新婚の様な雰囲気を出しているこの二人は素だったのか、と今更だが分かり、彼らは呆れた様に口々に言葉を零す。
「『夫婦喧嘩は犬も食わない』って言うけど…そのケンカもないのか」
「万年新婚夫婦の二人に合う言葉って何かあるのかね」
 と、ずっと様子を見ていたらしい殿馬が不意に口を開いた。
「『猫またぎ』っつう言葉があるづら」
「『猫またぎ』?」
「つまり、猫もまたぐほどどうしようもねぇくれぇまじい料理って事づんづら。この二人はまじぃ料理じゃねぇづらが、猫がまたぐほどどうしようもねぇってとこは合ってるんじゃねぇづらか」
「『猫またぎ』…そういう事なら合いそうだな」
「という事は二人は言ってみれば『猫またぎの恋人』ってとこかな」
「そりゃいい!最高!」
 三太郎の言葉に面々は笑って同意する。その言葉に山田と里中は狼狽しながらそれぞれ反論する。
「そりゃないだろ!」
「いくらなんでも酷すぎだぜ!」
「だったら人前で臆面もなくいちゃいちゃするのはやめるんだな。そうしたらこの呼び名返上してやるよ」
「~っ!」
 夜半のロッカールーム、チームメイトは山田と里中を肴に、賑やかに過ごすのだった。