早朝、松山のホテルの一室で目を覚ました土井垣は自分が下着一枚の姿である事に気付いて驚いた。本当なら安眠のためパジャマの一つも持参したいところだが荷物が増えてしまうので仕方なく、いつも遠征時のホテルではそのホテルの部屋着を着て寝るのが常で、昨日だってそうして眠ったはず――と、そこまで考えてふと隣で眠っている存在に気付き、改めて部屋を見回してそこに散乱している服やら下着やらを認め、自分が行った昨夜一連の『ご乱行』を思い出し赤面する。そうだ、昨日の誕生日の晩、チームメイトが『プレゼント』と称してナイターへの招待からホテルから全て手配して『彼女』を贈ってくれた。それが嬉しくて、ほんの少しの酒だったのにその幸せのせいで酔いが余計に回りいつもより容易に欲望のタガが外れ、彼女をこの部屋に来た途端押し倒し、いつまでもいつまでも抱いて――疲れて動けなくなった『彼女』が『も…駄目…ここで…寝る』と自分の部屋着を奪い取り(まあ仕方ないと渡した面もあるが)何とか着込んでそのまま寝込んだのだ、と思い出すと共に、自分の際限のない欲望の深さに改めて気付かされ口元を押さえてため息をつく。そうして反省したにもかかわらず眠っている『彼女』――葉月の姿を見るとまたその欲望が突き動かされる。このホテルの部屋着はガウン式でズボンなどがないため、それを着ている彼女のしなやかな素足がすらりとその部屋着から伸びている。更にフリーサイズで彼にも着られるサイズとはいえ、彼女の家系に遺伝している均整のとれた肉感的な体型に足して、声楽家の卵時代に太ってはいないが少しふくよかだった名残で胸や腰はその割合細身の身体に反比例して豊かなせいか胸元がかなりきつそうであり、腰に至っては寝返りなどに耐えきれなかったせいかめくれてしまっていて…つまり下着も着けていない裸身が半分見えてしまっているのだ。そんなあられもない姿で無防備に眠っている(というより疲れ切ってしまっていて恥じらいどころではない位寝入っているのだが)彼女に欲望とある種の征服欲とほんの少しの嗜虐心の混じった感情が湧き起こり、その突き動かされる感情のままに、彼は彼女が身にまとっている部屋着のボタンを外していく。胸元のボタンが外れて豊かな白い胸が露わになった所で、彼女も無意識だろうが締めつけられていた胸元が楽になったのか、小さなため息をついた。そうして全てのボタンを外し、割合明るい場所で彼女の裸身を改めて見た土井垣はその美しさにため息をつくと共に、今しがた感じていた欲望と征服欲と嗜虐心が混じった感情が更に高まっていく。乳白色の滑らかな肌、豊かで柔らかな白い胸、細身のウエストと反比例した適度に肉付きの良い豊かな腰、すらりと伸びたしなやかな脚――土井垣は彼女の裸身に感嘆しながらも、同時に今持っている欲望を感じ、彼女が過去に遭ったある『事件』を知っているので、まるでその『事件』を起こした『男』の様な下卑た感情を持っている自分に自己嫌悪を抱いたが、それでも『その男』のした事は許されないとしても、心の奥底で『その男』が彼女への欲望に翻弄された理由が何となく分かった気がした。彼女の姉達に見せてもらった過去の彼女の写真を見ると、顔つきは年相応に幼いながら、それとは裏腹に年齢に見合わず身体つきは他の少女と比べ明らかに肉体的に成熟が早いのが一目で分かった。故に、今の性格から考えても性格自体は幼く無邪気だっただろうが、それを無視して肉体だけを欲望のままに見ていたら欲望が抑えられなくなる男が出ても確かにおかしくないとも思う。そしてその時から変わらない無邪気で可愛らしい性格ももちろん愛しているが、欲望のままに見たらやはり何一つ変わっていない…いや、年を経て更に美しくなった蠱惑的な彼女の肉体を、自分だけのものにしたくなる――彼はそんな衝動が抑えられなくなっていた。その欲望のままに、まず彼は彼女の太腿をするりと撫でる。彼女はうるさいとばかりにその手を払った。そんな彼女が愛おしいと思いながらも、彼は欲望と征服欲と嗜虐心のままに作業を進めていく。太腿から腰にかけて優しく愛撫すると、彼女は眠りたいのかその愛撫から逃げようと身体をよじる。彼はそうした彼女を起こさない様にそっと抑えながら、今度は彼女の胸元に手を滑らせる。揉みしだくのではなく、さらり、さらりと膨らみから胸の頂に手を滑らせると、思った通り彼女はその手を払いながらもその愛撫に反応し、半分寝ぼけた様な眼差しで甘い声を上げた。
「しょ…さん…?」
「お前は眠っていていい…眠っていても…気持ちよくしてやるから」
そうして彼は彼女の身体中に手を滑らせていき、彼女を完全に目覚めさせない様に、しかし彼女に確実に快楽を与える様に愛撫する。そうして彼女が夢現の状態のまま甘いため息が多くなって来た所で、彼は愛撫で反応していた胸の頂を口に含み舌で味わい、転がす。その与えられた少し強い快楽で彼女はさすがに何をされているのか気付いたのか夢と現の最中で目を覚まさなければと努力するが、疲れの余り覚睡する事も出来ず、夢現の中快楽に溺れ、それでも目を覚まそうと何度も目を開けようとする。その彼女の様子に土井垣は嗜虐心のままにその耳元に囁きかける。
「起きなくていい…夢の中で…俺の快楽に身を任せて…とろけてしまえ」
葉月はその言葉に、朦朧とした意識であったが顔を赤らめて息を止める。それでも眠気には勝てないのかまた諦めた様に眠りについて行った。土井垣はそんな自分達のやり取りを感じて、ある童話を思い出していた。それは『眠り姫』。これの子供達に聞かせる形で知られている話は、眠っていた姫は王子のキスで目が覚めてハッピーエンドだが、確か原本だったか派生の話だったかでは、眠り姫の所に辿り着いた王子はその姫を眠らせたまま犯してしまい、それで姫は眠ったまま妊娠し、出産後赤ん坊が授乳する痛みで目を覚ますのだ。そんな事を思い出して、自分はまるでその王子だなと苦笑しながら、彼は最後まで残していた彼女の聖域に手を滑り込ませ、茂みに秘められた泉や花芯を愛撫していく。その強い快楽にはさすがに彼女も目が覚めたのか、今までの夢現の状態ではなく、覚醒し始めた状態が分かる眼差しで身をよじって抵抗する姿勢を見せる。その彼女に土井垣は優しく囁く。
「お前は…美しすぎる。だから…そんな美しいお前が欲しいからこのまま抱きたい。起床時間ぎりぎりまで…駄目か?」
土井垣の言葉に葉月は覚醒したとはいえまだ半分寝ぼけながらも戸惑った口調で返す。
「でも…昨日だって…あんなに…ずっと…なのに…朝からこんな事してたら…将さん疲れちゃっていい采配もプレーもできないわ。そんな将さんは…あたし…いや」
「大丈夫さ、お前がこうしてくれる事で、俺は力が湧いてくるんだ。だから…もっとお前をくれ」
「…しょうさん」
彼の欲望と征服欲と嗜虐心が入り混じっている感情を理解しているからこそ、ほんの少しの抵抗があるが、それ以上に自分に対する愛を受け取って、彼女はまだ完全に覚醒しきっていないが遠慮がちにゆっくりと起き上がり、はだけられた部屋着を完全に脱ぐと、彼の首に腕を絡ませキスをする。そのキスで彼女の心が分かった土井垣は彼女を愛しむ様に、しかしほんの少し自分の欲望を昇華する様に彼女の泉に顔を埋め、淫靡な音を立ててその蜜を味わいながら吸い上げた。その与えられる快楽に彼女は息を荒げ、甘い声を出し、やがて頂点へ上りつめ、身体から力が抜ける。それも気にしない風情で彼はとうに主張していた彼自身で彼女を貫く。彼女の外は控えめに戸惑った様子を見せているが、内は彼女の想いを表す様に彼を滑らかに受け入れ、絡みつき、それを感じた彼は同時に彼女を突きあげる。彼女は様子こそその快楽を控えめに受け入れる一方の風情だったが、胎内は確かに彼を積極的に絡め取っていて、そうしながら見せている表情が控えめに快楽を受け入れている様子とは裏腹に何とも妖艶で――彼の欲望と快楽を更に駆り立てる。眠り姫を犯した王子、それを受け入れる眠り姫――その内、彼女もまた快楽が高まって来たのか、表情に妖艶さが増すのと合わせ、ほんの少し高めに甘い声と切なげなため息が漏れてくる。そうして互いに快楽を分け合い、甘い溜息と声を絡ませながら、彼は彼女の胎内に感じる快楽と欲望のままにその欲望を放出した。
行為が終わった後、土井垣が結局は『ご乱行』を引きずってしまったのだと分かり、申し訳なくなって葉月に声をかけた。
「すまん…俺の欲望だけで走ってしまって…」
「…そうね。夜の強引な将さんも含めて…あんまりこういう将さん、好きじゃない」
「…そうか」
「…でもね、その代わりあたしも…お返しさせてもらうわ」
「…え?」
そう言うが早いか葉月は彼自身に手を掛け口に含み、口と舌を蠢かせる。そのめくるめく強い快楽に土井垣はめまいがする程に溺れ、ただ声を上げるのみ。そしてしばらくして彼は彼女の口腔内に欲望を放出すると、彼女はそれを複雑な表情で飲み込み、挑発的な仕草で口元に残った彼の精を拭って、妖艶な笑みを見せた。
「…フェアじゃない気もするけど、これで…おあいこ」
そう言って妖艶に微笑んでいる葉月に土井垣は息を荒げながら問いかける。
「お前…どこでこんな技術を習ってくるんだ…その、俺が言うのもなんだが…その、うますぎるぞ」
「さあね…どこででしょう?」
「まさか…誰かで実地…とかじゃないよな」
「ご想像にお任せします。将さんだって似た様なものじゃない…そんなに…上手で」
土井垣が嫉妬を込めて返した言葉に挑発的にさらっと返しながらも、最後の言葉は赤面しながら口ごもった葉月に、彼は愛おしさが増してきて彼女を抱きしめながら囁く。
「少なくとも今の俺はお前だけだぞ。…こんな事を言うと『あの男』みたいで俺も嫌だが…お前の身体は…抱く度にもっと欲しくなる。俺の手でお前をもっと…とろけさせてやりたくなる。そのための『何か』はやっていないが…その気持ちだけは持っている」
「…そう」
葉月はしばらく抱きしめられるままになっていたが、やがて土井垣に啄む様なキスをすると顔を赤らめながら囁く様に言葉を返す。
「将さんは…『あの男』みたいじゃないわ…おんなじ様に見えて…ちゃんと…違うって…分かるわ。それにね、もうタネ明かししちゃうけど、あたしも将さんと同じよ?将さんが気持ちよくなる様にって事…多少は色々見たりして…その、覚えるけど…実地はしてないわ。…基本は…気持ちよくしてあげたいって…気持ちだけ」
「…そうか」
「…うん」
「…それじゃあもう一度、そんな気持ちで…お互い気持ちよくしあってみるか」
「…将さん」
土井垣の悪戯っぽい提案に葉月は呆れた口調で返したが、それでもその身体を土井垣に預ける。そうして目覚めた眠り姫と王子は今度はきちんとお互いを認めた状態で愛を確認した。
――そして朝食時――
「…なあ」
「どうした?」
「土井垣さん、今日は珍しく朝っぱらから機嫌いいよな」
「ああ、普段だと血圧高そうに見えてホントは低血なのか、飯食ってしばらくするまで機嫌悪くて難しい顔してんのに」
「…まさか朝早く起きて朝っぱらから宮田さんとヤってたとか?」
「こら、あまり下衆な勘繰りはやめろ。いいじゃないか、どんな理由であれ監督の機嫌が良ければ、こちらが何かと気を遣う事もないんだし」
「義経…お前何でそう優等生的発言しかしないんだよ」
「まあ義経の言う事にも一理あるけどな」
「で〜もあの機嫌の良さは正直不気味だよな〜」
「まあ不気味だけどその機嫌の良さが試合まで続いて、その調子のよさのまま勝てればいいけどな〜」
「そうだな〜」
「そういやその元気の素の宮田さんは?」
「さっき携帯にかけたら、あんまり朝は食欲ないからってもう軽く朝食食べ終えて、帰る支度してた。それに飛行機の時間もあるからって。『短い時間だったけど来られて良かった、皆にありがとうって言っておいて』ってさ」
「強行軍で来させちゃったけど。おかげさんで土井垣さんの機嫌アップ図れて良かったよな」
「だな〜これで勝てたら勝率に効果ありってこったから、これからも時々こういう計画立てようぜ〜」
「さんせ〜い」
そんな事を言われているとも知らず、土井垣はその日はご機嫌試合も勝利、自らにも結果を出したが、葉月の方は帰らなければいけなかった理由のその翌日の仕事時には元通りになり影響はなかったが、帰ったその日一日は夢現をずっと彷徨う位夢の中にいたというのは余談である。
…あい、という訳で『真夜中は別の顔』で構想だけ書いていた『土井垣さん、葉月ちゃんの寝込み襲う』ネタでした(笑)。最初は『満月ポトフー』の続きで、御館さんところにいついてた葉月ちゃんに嫉妬した土井垣さんが引き戻して手出ししまくった事後の話で構想してたんですが、ふっと私がライブに行く時に定宿にしているホテル備え付けの寝巻と『眠り姫』の元ネタががいいネタになるな〜と思った事から『裏プレゼントは君』の続きのお話にシフトチェンジ。葉月ちゃんの『傷』を知ってる土井垣さんですので自分の性欲はよろしくないと思ってセーブ掛けようとしましたが据え膳はやっぱりおいしそうだったようで(爆笑)。ちなみに葉月ちゃんの体型のイメージは中世ヨーロッパの美人を想像していただくと分かるんですが、ぽっちゃりとはちょっと違うんですがいわゆる男好きするグラマラス美人です。可愛い顔してボン・キュ・ボンって…そりゃ土井垣さんも我慢できないわ(笑)。ついでに言うと弥生ちゃんはスレンダー美人、若菜ちゃんはしつこく書いてる通りスレンダー通り越して華奢で可憐です。三者三様いい女。男女エロなので書いていて赤面するけど楽しい。でも801も書ける様にならなきゃなぁ…
そしてまあ葉月ちゃんが大胆になっちゃって…土井垣さんもそりゃご機嫌になるでしょう(笑)。そしてそれを察したスターズの面々も腹黒い計画を立て始めました。…っていうか義経が『優等生的発言』してると言っていますが、よくよく見ると一番身も蓋もない事をおっしゃっているのがこいつです(爆笑)。実は一番腹黒いんじゃないか?義経…
さてこっちがかけた事だし次はコスプレエッチか。…っていうかこれ何かメインが土井垣さんじゃなくって義経にシフトチェンジしそうになってるんですが今…また変態義経発動か?それより『心の旅人シリーズ』だ!頑張れ自分!
[2012年 05月 27日改稿]