「…なあ、山田」
「何だ?里中」
「俺、明訓野球部に入って本当によかったって思うんだ」
「里中…」
「もちろん一番は山田とバッテリーを組めて、甲子園に行けた事だけど…それだけじゃない。岩鬼や殿馬やちょっと遅れたけど三太郎と出会えて、山岡さんや北さん達がいて、渚や、高代が入ってきて…そんなこの明訓野球部に入って、皆と仲間になって野球ができた事がすごく嬉しいんだ」
「そうか…そうだな。俺もそう思う」
「そう思ってくれるか?」
「ああ」
「山田…ありがとう」
「お~い、お前ら何二人でいちゃついてるんだよ」
「づら」
「ああ、皆に出会えて、仲間になれて良かったなって言ってたんだ」
「ふ~ん?…俺もだぜ」
「三太郎も?」
「ああ、土門さんを裏切っちまったのは悪い気がするし、山田にキャッチャーの座を奪われたのはちょっと悔しいけど、でもお前らに出会って、一緒に野球ができて良かった、って思ってるぜ」
「そうか…殿馬は?」
「こんなおもしれぇ奴らと一緒にいて、楽しくねぇ訳ねぇづら。音楽もいいけどよぉ、こっちもいいづら」
「そうか」
「こ~らお前らぁ!な~にさぼっとんねん!」
「ああ岩鬼」
「岩鬼。なあ、お前は俺達と一緒に野球ができて良かったと思うか?」
「な~に言っとんねん。おんどれらはわいがいないと駄目やさかい、わいはしょ~がなくここにいてやっとんのや」
「そっか。お前も良かったって思ってくれるんだな」
「何でそうなんねん!」
「だって…なあ」
「ああ」
「だから何でやねん!」
「こらーっ!お前ら何さぼってる!練習せんか!」
「ああ、来た来た…『あれ』もそう思うと楽しみの一つだよな」
「そうだな」
「づら」
「さあ、練習しようぜ」
「さあ、わいに付いて来いや!」

――少年達は駆け出す。夢に向かって真っ直ぐに、心に幸せを秘めて――