忍としての修行を始めて最初に覚えた事は、『人は独りで生き、独りで死ぬもの』という事。赤子の時親に捨てられ、忍びの長に拾われた自分は親の顔やぬくもりなど知らない。自分を拾ってくれた師匠である長も、隠れ里の者達も、親としての情など与えてくれた記憶もない。物心ついた頃から忍として鍛えられた自分に残る記憶は厳しい顔の師匠、体に走る苦痛、修行に耐え切れず死んでいく多くの自分と同じ境遇の者達の姿――。そして月日が過ぎるうちに彼は一流の忍として成長していったが、人間というものに対しては強烈な不信感を抱く様になっていた。

 そして彼が任務を無事済ませ隠れ里に帰ろうとしていたある時、突然天から声が聞こえてきた。彼が見上げると、そこには大きな闇が広がっていた。

――お前の忍としての力が欲しい、お前を疎んじた人間どもに復讐はしたくないか。我に身を任せれば、その願いは叶う――

 その言葉に惹きつけられる様に彼は隠れ里へは帰らず、その闇へ身を任せた。そして彼はその闇――悪魔将軍――の直属の部下である悪魔騎士として悪行超人の仲間入りをしたのである。

 そうして悪行超人として悪の限りを尽くしてきた彼に転機が訪れたのは、ブロッケンJr.との対戦であった。何があっても友情を信じ、自分に向かってくる純粋な瞳――これは彼が忍時代にも、悪魔騎士時代にも見た事がないもので、同時にそれに無意識に惹かれる自分を覚えていた。そして勝負はブロッケンJr.が制し、自分は超人墓場へと送られた。その超人墓場で偶然か、必然か、彼の父とも面識を持つ様になった。正義の側に立つ残虐超人といわれた男――彼と作業の合間に折に触れて話す仲になり、自分が彼らに惹かれる理由が分かる気がした。人間に対して不信感を持っている様で、本当は自分は人間を信じたいんだ――その事に辿り着いた時、ブロッケンマンはたった一言こう言った。『お前はここにいるべき男ではない。元あるべき所へ帰れ』と――その言葉が胸に染み透り、彼は必死になって命の玉を集め復活し、友情というものを知るために、その時起きていたキン肉族の跡目争いである王位争奪戦へソルジャーチームとして参加する事にした。

 結果は散々だった。パワーも、技も、相手の方が数段上で、自分にはなすすべもなかった。しかしソルジャーを始めとしたチームメイトは自分を信じて応援してくれた。そして敗北し、死の淵に立った自分の闘いがチームに力をもたらしたとさえ言ってくれた。人とは、友情とは、こんなに暖かなものだったのか――死の淵であってもはっきりと胸に刻まれた暖かさに包まれながら彼はもう一度死の世界へと旅立った――

 その後キン肉マンのフェイスフラッシュで三度生を受けた自分は明らかに変わっていた。今までの償いをするかの様に、ソルジャーから依頼された宇宙に残っている悪行超人を捕まえる超人アンタッチャブルに参加し、自分と同じ道を辿っている者達を更生させるように導くのが、自分の役目と位置づけ、旺盛な活動を行い、コクモと言う弟子も得た。思えばこれが一番の彼の幸せな時だったのかもしれない。その後、ある捕り物で自分の手落ちからコクモは顔の皮を剥がされ死に、その後超人アンタッチャブルも解散した。弟子を自分の手落ちから死なせてしまった後悔に囚われつつも、アンタッチャブルが解散してからはバンサーとして弟子の無念を晴らす事を胸に秘め、彼は生き続けた。

「お面頂戴!」
 清水の舞台で弟子の無念を晴らすつもりが、自分も弟子同様顔の皮を剥がされ死へと向かう事になった。今度こそ本当の死となるだろう。そしてその遺体は誰にも見えない谷底へ落とす様に自ら仕向けた。『人は独りで生き、独りで死ぬもの』この思いは結局彼の中から抜けることはなかった。しかしその死が誰かに、この場合は万太郎に何かをもたらす事ができる――それは繰り返した生と死の中で知った思いであった。自分の死から万太郎が何を得るかは分からない。しかしきっと何かを得てくれる。そのためなら死など怖れるものではない――矛盾しているが、仲間のために死ぬ事も彼は繰り返された生と死で知ったのだ。落下する感覚と薄れ行く意識の中で、やっと自分は生というものを知った気がした――