この墓地にはどの墓所からも離されひっそりと佇む墓があった。その墓の周囲には雑草が生い茂り、長い間訪れる者がいない事を物語っている。その墓の前に一人の男が歩み寄る。手には白い花が小ぶりの花束となって握られていた。男は墓の前に立つと、墓を見詰め、静かに口を開く。
「今まで独りにして、すまなかったな…」
男は持っていた花を墓に手向ける。
「どんな豪華な花束や贈り物よりもお前はこの花が好きだったな…ただ野で摘んだだけなのに『私が一番嬉しかったのはあの花よ』と微笑っていた…」
男は墓の主に想いを馳せる。――男の名は通称ブロッケンマン、墓の主は彼の最愛の女性であった。
「アマーリエ…」