――あの時から、私たちの恋は始まったのだろうか…いや、もしかすると初めて会った時から、私はお前に恋をしていたのかもしれないな…――
それは世間にとって許されない恋の始まりでもあった。そうしたさまざまな苦しみをその後乗り越えて、二人は結ばれた。しかしすぐにその幸せも消え、永い時間が経ち、今では彼女はこの世にはおらず、自分だけが永らえここにいる――ブロッケンマンはふと空を見上げた。今は亡き最愛の女性の面影を探そうとする様に――彼は空へ向かって呟いた。
「アマーリエ、もうすぐ私もそちらへ行く。その時にお前は…私を迎えてくれるか?」
彼女を苦しめ続けた自責の念が、その言葉には込められていた。何があっても自分を愛し続けてくれた彼女。しかしそれは彼女を苦しめ続ける結果にもなった事を、彼は知っていた。知っていて知らぬ振りを続けた自分、そして彼女がこの世から去った後彼女の想いも自分の想いも封印し、なかったことにした自分――そんな自分を今は恥じていた。しかしそうする事しかできなかった自分の若さを恥じながらも、懐かしく思えてしまう。なぜなら自分ももうすぐこの世から去るのだから――
「お前を苦しめ続けてしまった私を許してくれ…そして許してくれるのならば…私をあの時の様な最高の微笑で迎えてくれ…」
ブロッケンマンはそう呟き踵を返すと、墓地から去っていった。