「うわぁ~、綺麗ですね~義経さんもかっこいいですけど、義経さんの奥さんってとっても綺麗なんですね~」
 でき上がってスターズに送られて来たポスターを見ながら光がうっとりとした表情で口を開く。他のチームメイトはポスターからですら醸し出される二人の相変わらずの甘い雰囲気に半分呆れながらも、なりきっている状態の二人に声を押し殺して笑っている。義経はそんな一同の様子に苦虫を噛みつぶした表情を見せていた。その内腹痛と笑いを堪えながら、星王が口を開く。
「…似合う、義経!似合いすぎて笑えるわ~」
「…うるさい、職務遂行しただけだ」
「お前プロ野球選手辞めても、道場おん出されてもこれで食ってけるよ」
「…知るか」
「で、もちろんポスターの元になった写真、貰ったんだよな」
「…まあな」
「お前ら籍もそうだけど式まだだったよな。こうやってモデル業で全国姫さんとドサ周りしたらいい結婚記念写真集できるんじゃね?」
「台湾とか結婚の時そうやってロケして結婚写真集作るって聞いた事あるぜ~」
「いいな~結婚写真が各地の扮装か~私もやってみたいです~」
「うるさい!ほっといてくれ!」
 からかうチームメイトと何も考えずうっとりしている光の言葉に義経は声を荒げる。しかしそうした態度をとっていても、自分はともかく若菜の様々な美しい姿が見られるならそれもいいかもしれないとふと思う義経。そんな一同を春の陽と桜が見守っていた。

 そしてこのポスターが見事功を奏し、イベント自体も成功を収めたのと同時にポスターを譲って欲しいという問い合わせが殺到したとかしないとか、コンペに負けた瑠璃が怒りのあまりある事ない事週刊誌に暴露したが、トップモデルでも評判が悪かったのかむしろ勝った若菜に同情と称賛が寄せられたとか、若菜の姿を見てファンになった人間が一目生の姿を見ようと市役所に殺到したので、市が本気で彼女を観光課に異動させようかと悩んで提案し、ケースワークを本気でしている彼女に拒否されたとか、それらの余波でその年の若菜の所属している劇団の公演はいつになく集客が良かったとかいう後日談があったのは余談である――