「アマーリエ…お前は、幸せだったか…?」
 彼は時計に向かって問い掛ける。時計は無機質にただ時を刻むのみ。しかしこの時計はずっと二人を見詰めて時を刻みつけてきたものだ。喜びも、悲しみも、愛も全て――そうして刻み付けられてきた時を思い返し、彼は呟く。
「私は、幸せだった。…ほんの少しだったが…お前と一緒にいられて…」
 時計は更に時を刻む。彼は続ける。
「私が死んだら、もう持ち主がいなくなるな。…それとも、息子に託そうか。お前の最愛の息子に…」
 彼は二人の愛の結晶に思いを馳せる。自分以上の実力を持ち、17にして既に髑髏の徽章を授けた最愛の息子。自分がこの世を去ったら、残されたこの息子はどんな道を歩むのだろうか。そして、この時計を託したら、彼はどんな時を刻むのだろうか――
「…でも、せめて最期までは…私が持っていよう。それからどうなるかは…お前の心次第だ」
 そう言って彼は時を刻む時計をベッドサイドに置く。もうすぐ時が止まる自分と、それ以後も時を刻み続けるであろうこの時計。その違いを感じながら彼は眠りに就いていった――