そしてそれから一年。今年のクリスマスも雪が降り、世界を白く染めている。窓をまだぼんやり見詰めているテオドールに、クラウスはもう一度声を掛けた。
「さあ、ミサに行きましょう。そして祈りましょう…彼女と子供のために」
「ああ…そうだな」
テオドールが静かに頷くと、二人は踵を返しミサが行われる広間へ向かう。部屋を出る時、テオドールはもう一度振り返って窓の外を見た。白い、白いクリスマス。何もかもを、自分達を隔てる壁さえも覆い尽くしてしまえばいいのに、とふと思ったが彼はその考えを振り払う。あの壁を消すのは自分達がしなければならない事。そしてそれを自分は必ず実行してみせる。愛する者のために――