そして更に日々が過ぎて、クリスマスイブ。三太郎は弥生をホテルのレストランへ呼び出した。弥生はコバルトブルーのフォーマルワンピースを着て現れる。このワンピースは若菜や不知火の結婚式にも着て来て、三太郎が『似合う』と褒めた物。自分が褒めたものを着て精一杯の想いを表しながらも、その裏腹にある彼女の哀しい決意を思って三太郎は一瞬胸が痛んだが、すぐにその痛みも自分の心にある決意で消え失せる。弥生が三太郎の前に座ると、給仕が食前酒を用意し、二人は乾杯する。乾杯した所で、三太郎はおもむろに口火を切った。
「…弥生さん」
「何?微笑君」
「俺を見損なうなよ」
「…どういう事?」
三太郎の言葉に冷静な態度を崩して戸惑う弥生をわざと咎める様に彼は続ける。
「東京からいなくなるから別れるなんて、どうして一人で勝手に決めるんだよ。プロ野球選手なんてホームがどこでも年中全国飛び回ってるんだから、どこに住んでたって問題ないだろ?そうじゃなくたってこんな事言っちゃ何だけど、現役引退は順当に考えたら絶対に俺の方が先なんだぜ?更に住むとこ関係ないじゃん。それに何よりまだ自分がどうなるか分からない土井垣さんだって義経だって、小田原に住むって決めたんだぜ?…ほら、俺達が別れる理由全然ないだろ」
「でも…自分からあっちに住むって決めた土井垣さんや義経君と違って、あたしの場合はあたしの都合を押し付ける形になるもの…三太郎君には自由でいて欲しいの。だから…」
そう言って哀しげに俯く弥生を見詰めていた三太郎はふっと小さな溜息をつくと、真摯な口調で言葉を重ねる。
「そうやって自分を抑えちまうのが弥生さんだもんな。…だから、そんな弥生さんに俺の想いと決心を伝えるためにも、厳選したクリスマスプレゼントを用意したんだ。まずは…これ」
そう言うと三太郎は少し大きめの箱を開けて、弥生に見せる。そこにあったのはアクアマリンとダイヤが散りばめられたプラチナの上品で繊細な細工の指輪と、あつらえた様にそれに合ったデザインのアクアマリンのネックレス。彼は真摯な口調のまま続ける。
「…指輪は、婚約指輪のつもりだよ。でも、婚約指輪って結婚してから中々使えなくなるだろ?それ悔しいから結婚してからも使えるようにって、婚約指輪っぽくしないで、ネックレスも付けてみた。で、これは丁度知り合いの奥さんにジュエリーデザイナーやってる人がいたから、弥生さんの写真送って誕生日とイメージ伝えて『この人にプロポーズしたいからこの人が最高に輝く、最高の物を作ってくれ』って頼んで、作ってもらった物なんだ。だから…これは弥生さんだけの物。他の誰でも意味がない…本当に弥生さんのためだけの物だぜ」
「三太郎君…」
言葉を失っている弥生に、三太郎は更に畳み掛ける様に続ける。
「今回の事がなくても、最初から今年のクリスマスプレゼントはこれって決めてたんだ。で、来年のオフに結婚ってゆっくり進めようって…でも、弥生さんが真鶴へ帰って俺と別れるって決意しかけてるんじゃ、いくら一点物のプレゼントだとしても俺の想いを伝えるにはこれだけじゃもう足りないと思ったから、もう一つ。…これを」
「え?これ…」
そうして三太郎はもう一つの『クリスマスプレゼント』を広げて見せる。それは弥生と二人で決める所以外は全て書き込まれた婚姻届だった。
「保証人は土井垣さんと、もう一人は宮田さんに頼んで紹介してもらって、弥生さんが病院でお世話になってるっていう看護師長さんに頭下げて頼んだ。二人とも応援と一緒に笑顔で快く書いてくれたよ。…これが俺の今年のクリスマスプレゼントの一番最後で、何より一番の俺の想いと決心。後は弥生さんが何も余計な不安を考えずに、俺を信じてこれを書いてくれたら…俺はそれが何より嬉しい弥生さんからのクリスマスプレゼント。だから…俺を信じて…書いてくれないかな」
「三太郎君…でも…」
ためらう弥生に、三太郎はいつになく真摯な瞳で、精一杯の想いを伝える言葉をはっきりと紡ぐ。
「俺、弥生さんの夢を一番近くで応援したいって、ずっと思ってた。それに、俺の夢を一番近くで応援してくれる人は、弥生さんじゃなきゃ、意味が無いんだ…だから…俺を君の夢に乗せてくれよ」
「…」
弥生は俯いて沈黙する。三太郎はじっと見詰める。やがて弥生は俯いたままぽつりと呟く。
「…いいの?」
「弥生さんじゃなきゃ…意味がない」
三太郎の言葉に、弥生は顔を上げると、決意を込めた瞳で見つめ返して言葉を紡ぐ。
「あたしも…三太郎君じゃないと意味がないの。…だから…一緒に真鶴へ来てくれる?でも本当は駄目なら駄目って言って…そうしたら、何もかも全部…諦められるから」
弥生の言葉に、三太郎は自分の想いが伝わった事に喜びを感じながら明るく、しかし真摯な心は伝わる口調で言葉を返す。
「何言ってんだよ。俺、その言葉を待ってたんだぜ?だから、一緒に俺も真鶴へ連れてってくれよ…俺は弥生さんと絶対に離れたくないんだからさ」
「…でも、遠征の時は大変よ?小田原と違って電車少ないんだから」
「その時は、土井垣さんが残した宮田さんの部屋に泊まる事にしてあるから大丈夫。いざとなったら文明の利器、車って手もあるしな」
「…随分と根回しがいいわね」
やっとの事でいつものペースになった弥生に、三太郎は軽く、でも真摯に返す。
「それ位はしないと…俺の真剣さ、伝わらないと思ったからさ」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
そうして二人に暖かな沈黙が訪れる。しばらくの沈黙の後、三太郎はわざと思い出したかの様な口調で、更に弥生にとって驚きの、でも嬉しい言葉を紡ぎ出した。
「…そうだ、それからもう一つ。三月のオフの日に結婚式場予約しようと思うんだけど、どうかな。冬のオフにはもう間に合わないけど、逆にジューンブライドとはいかないまでも、弥生さんの誕生日の月に式挙げられるなんて、最高に幸せじゃん。それに、弥生さんだって退職する前に永年一緒に仕事してきた病院の仲間に結婚、祝ってもらいたいだろ?弥生さんは外来もしてたけど、主に病棟勤務だって聞いたから、それなら病院関係者で土日関係ないから平日オッケーだし、ほとんどの人は大丈夫だと思って、式場と日程の候補はもういくつか決めてあるんだ」
三太郎の想いが充分伝わる言葉に、弥生は顔を赤らめると、嬉しそうにぽつりと応える。
「…三太郎君がそこまでしてくれるなら…そうして欲しい。ありがとう…あたしの事を考えてくれて」
「ああ、こっちこそ賛成してくれてありがとう…でもさ、この届けは絶対に今日出そうぜ。ご両親への挨拶が後になっちまうけど、少しでも早く俺、弥生さんと一緒になりたいんだ」
三太郎の言葉に弥生はしばらく考え込んでいたが、やがてまたぽつりと応える。
「…駄目」
「何でだよ。ここまで決まったんなら出しても全然問題ないじゃん。それともまだ何か問題があるのか?」
「…ええ、あるわ」
「何だよ、その問題って」
不満そうな三太郎の言葉に、弥生は悪戯っぽい微笑みを見せると、彼に応える。
「どっちの名字にするか、それから、真鶴に帰るまでの三ヶ月と帰ってからどこへ住むか…決めないと」
「…え」
驚く三太郎に、弥生は悪戯っぽく、しかし心からの優しい口調で言葉を重ねる。
「三太郎君は婿入りしてもいいって言ってくれたけど、本当の事言うと妹の睦美が『姉さんは今のままが一番いいから、今のまま家にこだわらないで自由でいて。家はあたしが守るから』って言って、もちろん恋愛結婚だったけど、婿養子になるって言ってくれた心が広~い外科もできる小児科医の人見つけて一足先にもう結婚して、親とも同居してくれて、隣の湯河原で自分の専門の産婦人科と合わせて、『出産から子育てまでお任せ』が売りの小児科含めたレディースクリニックを開業してるのよ。だから確かに実家に戻って家の小児科は内科含めて継ぐけど、あたしも本当の意味じゃ家からは自由の身って訳。だから…今夜一晩二人でゆっくり考えましょう?どっちの名字にして、どこに住むか。そうして一晩考えて、答えを出して…明日これは出しましょう?…だって…明日はクリスマス当日だもの。…クリスマスが結婚記念日なんて、いつまでも忘れられない幸せじゃない」
「弥生さん…」
弥生の言葉に、三太郎は何とも言えない喜びと充実感を感じ、頷く。
「…そうだな、確かにそっちがいいや。そうしよっか」
「ふふ」
そうして食事とワインに手を付けながら、三太郎は暖かな声でゆっくりと言葉を紡ぐ。
「皆…クリスマスは幸せだな」
その言葉に同意する様に、弥生も暖かな口調で言葉を続ける。
「そうね、はーちゃんは土井垣さんと、おゆきは義経君は修行に出ちゃってるけど代わりに義経君のご両親が遊びに来てるし、何よりお腹の赤ちゃんがいるし、真理ちゃんは不知火君と両方のご家族が一緒で、御館さんも不幸に見えてはーちゃんのお腹の赤ちゃん達がいるし…それであたしは三太郎君と…皆幸せね」
「ああ、そうだな。俺達も幸せ満喫しようぜ」
「そうね」
「…メリークリスマス」
「…こちらこそ、メリークリスマス」
それから二人は幸せな気持ちで食事をし、弥生のマンションでこれからの幸せについて話しながら、時を過ごした。そして翌日、初雪が降ってホワイトクリスマスになったその日に、二人は最高の幸せの日を迎えた――
そして更に三ヵ月後、桃の花が咲き零れる季節に更にそれを上回る大きな幸せが二人を待っているとは、まだ今の二人にも分からない話――
「…弥生さん」
「何?微笑君」
「俺を見損なうなよ」
「…どういう事?」
三太郎の言葉に冷静な態度を崩して戸惑う弥生をわざと咎める様に彼は続ける。
「東京からいなくなるから別れるなんて、どうして一人で勝手に決めるんだよ。プロ野球選手なんてホームがどこでも年中全国飛び回ってるんだから、どこに住んでたって問題ないだろ?そうじゃなくたってこんな事言っちゃ何だけど、現役引退は順当に考えたら絶対に俺の方が先なんだぜ?更に住むとこ関係ないじゃん。それに何よりまだ自分がどうなるか分からない土井垣さんだって義経だって、小田原に住むって決めたんだぜ?…ほら、俺達が別れる理由全然ないだろ」
「でも…自分からあっちに住むって決めた土井垣さんや義経君と違って、あたしの場合はあたしの都合を押し付ける形になるもの…三太郎君には自由でいて欲しいの。だから…」
そう言って哀しげに俯く弥生を見詰めていた三太郎はふっと小さな溜息をつくと、真摯な口調で言葉を重ねる。
「そうやって自分を抑えちまうのが弥生さんだもんな。…だから、そんな弥生さんに俺の想いと決心を伝えるためにも、厳選したクリスマスプレゼントを用意したんだ。まずは…これ」
そう言うと三太郎は少し大きめの箱を開けて、弥生に見せる。そこにあったのはアクアマリンとダイヤが散りばめられたプラチナの上品で繊細な細工の指輪と、あつらえた様にそれに合ったデザインのアクアマリンのネックレス。彼は真摯な口調のまま続ける。
「…指輪は、婚約指輪のつもりだよ。でも、婚約指輪って結婚してから中々使えなくなるだろ?それ悔しいから結婚してからも使えるようにって、婚約指輪っぽくしないで、ネックレスも付けてみた。で、これは丁度知り合いの奥さんにジュエリーデザイナーやってる人がいたから、弥生さんの写真送って誕生日とイメージ伝えて『この人にプロポーズしたいからこの人が最高に輝く、最高の物を作ってくれ』って頼んで、作ってもらった物なんだ。だから…これは弥生さんだけの物。他の誰でも意味がない…本当に弥生さんのためだけの物だぜ」
「三太郎君…」
言葉を失っている弥生に、三太郎は更に畳み掛ける様に続ける。
「今回の事がなくても、最初から今年のクリスマスプレゼントはこれって決めてたんだ。で、来年のオフに結婚ってゆっくり進めようって…でも、弥生さんが真鶴へ帰って俺と別れるって決意しかけてるんじゃ、いくら一点物のプレゼントだとしても俺の想いを伝えるにはこれだけじゃもう足りないと思ったから、もう一つ。…これを」
「え?これ…」
そうして三太郎はもう一つの『クリスマスプレゼント』を広げて見せる。それは弥生と二人で決める所以外は全て書き込まれた婚姻届だった。
「保証人は土井垣さんと、もう一人は宮田さんに頼んで紹介してもらって、弥生さんが病院でお世話になってるっていう看護師長さんに頭下げて頼んだ。二人とも応援と一緒に笑顔で快く書いてくれたよ。…これが俺の今年のクリスマスプレゼントの一番最後で、何より一番の俺の想いと決心。後は弥生さんが何も余計な不安を考えずに、俺を信じてこれを書いてくれたら…俺はそれが何より嬉しい弥生さんからのクリスマスプレゼント。だから…俺を信じて…書いてくれないかな」
「三太郎君…でも…」
ためらう弥生に、三太郎はいつになく真摯な瞳で、精一杯の想いを伝える言葉をはっきりと紡ぐ。
「俺、弥生さんの夢を一番近くで応援したいって、ずっと思ってた。それに、俺の夢を一番近くで応援してくれる人は、弥生さんじゃなきゃ、意味が無いんだ…だから…俺を君の夢に乗せてくれよ」
「…」
弥生は俯いて沈黙する。三太郎はじっと見詰める。やがて弥生は俯いたままぽつりと呟く。
「…いいの?」
「弥生さんじゃなきゃ…意味がない」
三太郎の言葉に、弥生は顔を上げると、決意を込めた瞳で見つめ返して言葉を紡ぐ。
「あたしも…三太郎君じゃないと意味がないの。…だから…一緒に真鶴へ来てくれる?でも本当は駄目なら駄目って言って…そうしたら、何もかも全部…諦められるから」
弥生の言葉に、三太郎は自分の想いが伝わった事に喜びを感じながら明るく、しかし真摯な心は伝わる口調で言葉を返す。
「何言ってんだよ。俺、その言葉を待ってたんだぜ?だから、一緒に俺も真鶴へ連れてってくれよ…俺は弥生さんと絶対に離れたくないんだからさ」
「…でも、遠征の時は大変よ?小田原と違って電車少ないんだから」
「その時は、土井垣さんが残した宮田さんの部屋に泊まる事にしてあるから大丈夫。いざとなったら文明の利器、車って手もあるしな」
「…随分と根回しがいいわね」
やっとの事でいつものペースになった弥生に、三太郎は軽く、でも真摯に返す。
「それ位はしないと…俺の真剣さ、伝わらないと思ったからさ」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
そうして二人に暖かな沈黙が訪れる。しばらくの沈黙の後、三太郎はわざと思い出したかの様な口調で、更に弥生にとって驚きの、でも嬉しい言葉を紡ぎ出した。
「…そうだ、それからもう一つ。三月のオフの日に結婚式場予約しようと思うんだけど、どうかな。冬のオフにはもう間に合わないけど、逆にジューンブライドとはいかないまでも、弥生さんの誕生日の月に式挙げられるなんて、最高に幸せじゃん。それに、弥生さんだって退職する前に永年一緒に仕事してきた病院の仲間に結婚、祝ってもらいたいだろ?弥生さんは外来もしてたけど、主に病棟勤務だって聞いたから、それなら病院関係者で土日関係ないから平日オッケーだし、ほとんどの人は大丈夫だと思って、式場と日程の候補はもういくつか決めてあるんだ」
三太郎の想いが充分伝わる言葉に、弥生は顔を赤らめると、嬉しそうにぽつりと応える。
「…三太郎君がそこまでしてくれるなら…そうして欲しい。ありがとう…あたしの事を考えてくれて」
「ああ、こっちこそ賛成してくれてありがとう…でもさ、この届けは絶対に今日出そうぜ。ご両親への挨拶が後になっちまうけど、少しでも早く俺、弥生さんと一緒になりたいんだ」
三太郎の言葉に弥生はしばらく考え込んでいたが、やがてまたぽつりと応える。
「…駄目」
「何でだよ。ここまで決まったんなら出しても全然問題ないじゃん。それともまだ何か問題があるのか?」
「…ええ、あるわ」
「何だよ、その問題って」
不満そうな三太郎の言葉に、弥生は悪戯っぽい微笑みを見せると、彼に応える。
「どっちの名字にするか、それから、真鶴に帰るまでの三ヶ月と帰ってからどこへ住むか…決めないと」
「…え」
驚く三太郎に、弥生は悪戯っぽく、しかし心からの優しい口調で言葉を重ねる。
「三太郎君は婿入りしてもいいって言ってくれたけど、本当の事言うと妹の睦美が『姉さんは今のままが一番いいから、今のまま家にこだわらないで自由でいて。家はあたしが守るから』って言って、もちろん恋愛結婚だったけど、婿養子になるって言ってくれた心が広~い外科もできる小児科医の人見つけて一足先にもう結婚して、親とも同居してくれて、隣の湯河原で自分の専門の産婦人科と合わせて、『出産から子育てまでお任せ』が売りの小児科含めたレディースクリニックを開業してるのよ。だから確かに実家に戻って家の小児科は内科含めて継ぐけど、あたしも本当の意味じゃ家からは自由の身って訳。だから…今夜一晩二人でゆっくり考えましょう?どっちの名字にして、どこに住むか。そうして一晩考えて、答えを出して…明日これは出しましょう?…だって…明日はクリスマス当日だもの。…クリスマスが結婚記念日なんて、いつまでも忘れられない幸せじゃない」
「弥生さん…」
弥生の言葉に、三太郎は何とも言えない喜びと充実感を感じ、頷く。
「…そうだな、確かにそっちがいいや。そうしよっか」
「ふふ」
そうして食事とワインに手を付けながら、三太郎は暖かな声でゆっくりと言葉を紡ぐ。
「皆…クリスマスは幸せだな」
その言葉に同意する様に、弥生も暖かな口調で言葉を続ける。
「そうね、はーちゃんは土井垣さんと、おゆきは義経君は修行に出ちゃってるけど代わりに義経君のご両親が遊びに来てるし、何よりお腹の赤ちゃんがいるし、真理ちゃんは不知火君と両方のご家族が一緒で、御館さんも不幸に見えてはーちゃんのお腹の赤ちゃん達がいるし…それであたしは三太郎君と…皆幸せね」
「ああ、そうだな。俺達も幸せ満喫しようぜ」
「そうね」
「…メリークリスマス」
「…こちらこそ、メリークリスマス」
それから二人は幸せな気持ちで食事をし、弥生のマンションでこれからの幸せについて話しながら、時を過ごした。そして翌日、初雪が降ってホワイトクリスマスになったその日に、二人は最高の幸せの日を迎えた――
そして更に三ヵ月後、桃の花が咲き零れる季節に更にそれを上回る大きな幸せが二人を待っているとは、まだ今の二人にも分からない話――