――眠っていたのだろうか、学生服姿の『自分』が目を覚ます。周囲を見渡すとそこは晴れ渡り爽やかな風が吹いている、いつも『自分達』が逢瀬に使っていた丘。そして『自分』の胸には最初の夢で枕元に置いていたあの本が大切に抱えられていた。どういう事なのだろうと起き上がると、その眼前に見事な雪柳を一枝手にした白無垢姿の『彼女』が微笑んで立っていた。それでその『意味』を理解した『自分』は立ち上がり、『彼女』に微笑みを返すと、『彼女』と同じく傍に咲いていた連翹をそっと一枝手折り、歩み寄る。『彼女』も『自分』に歩み寄り、二人は対面すると、『彼女』は手にした雪柳を彼の胸にそっと差して微笑み、『自分』もそれに返す形で彼女に連翹を添えた本を手渡し、そのままその手を取る。『彼女』は心からの幸せが分かるこれまでで一番美しい微笑みを見せると、彼の胸に身体を埋め、『自分』も幸福感のままにその彼女を抱き締めた。そしてしばらく抱き合った後、『彼女』は身体を離し、『自分』を促す様に前方の暖かな光が差し込む場所を彼から受け取った連翹で指し示す。『自分』はそれに頷くと彼女に寄り添う形でその肩を抱き、二人で微笑んで見つめ合いながらその光が差し込む場所へ歩いて行き、光に溶けて行った――